導入事例

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株式会社ZOZO様

業種:卸売業・小売業

部署:情報システム

利用用途:ワークフローシステム

使用製品:krewSheet/krewData

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事例公開日:2023年05月15日

※ 事例記事の内容や所属は取材当時のものです。

ビジネス環境に合わせたダイナミックな組織変更や柔軟な働き方に迅速に対応するワークフローをkintone × krewで実現。IT部門としてFASHION TECHを追求

ファッションEC「ZOZOTOWN」をはじめ、ファッションとテクノロジーの力を掛け合わせたさまざまなサービスを展開している株式会社ZOZOでは、社内のワークフローシステムとして展開していたkintoneの利活用を加速させるべくkrewシリーズを導入。従来Google Sheetsで行っていた業務の省力化を実現し、マスタ管理の効率化を実現している。その経緯について、コーポレートエンジニアリング部 ITサービスブロックの 新井 健太氏にお話を伺った。

【課題】kintoneによるワークフロー、マスタ管理に課題あり

■ ビジネス環境の変化に適用できるkintoneにてワークフローを整備

「世界中をカッコよく、世界中に笑顔を。」を企業理念に掲げ、さまざまなファッション関連サービスを展開している株式会社ZOZO。8,500以上のブランドを取り扱うファッションEC「ZOZOTOWN」をはじめ、1,300万件以上のコーディネート投稿数を誇るファッションコーディネートアプリ「WEAR」や常時60万点以上のブランド古着を掲載する「ZOZOUSED」、ZOZOTOWNとブランド実店舗をつなぐOMOプラットフォーム「ZOZOMO」、「ZOZOMAT」や「ZOZOGLASS」などのファッションに関連した各種計測ツールなどを展開(2022年12月末時点)。「MORE FASHION × FASHION TECH」を経営戦略に据え、ファッションテック企業として“ソウゾウのナナメウエ”をいくやり方で多くの顧客から支持されている。

そんな同社では、社内のさまざまな申請業務を行うためのワークフロー専用のシステムを導入・運用していたが、スマートデバイスから申請・承認できる柔軟性の確保や多様化・複雑化するビジネス環境の変化に対応するべく、現場のニーズに寄り添えるkintoneへの移行を実施。汎用性の高いkintoneによって、複雑な承認経路や細かな条件設定などの現場要件に即した申請業務の基盤としてワークフローを整備した経緯がある。しかし、ワークフローの基になる人や組織に変更が発生した場合は、Excelでそれらの情報を取りまとめ、Google Sheetsを介して、さらにそこからkintone上の各種マスタを手作業で更新する運用が続いていたという。

■ kintoneにおけるマスタ管理、人事異動や組織変更時の負担が大きい

そんな折、社内で活用しているさまざまなSaaSシステムを組み合わせることで業務の自動化や効率化によって従業員の生産性向上を図る、コーポレートエンジニアリング部に新井氏がジョインしたことがきっかけとなり、kintoneによるワークフローシステム以外の活用が促進されていったという。

「kintoneのワークフローシステムは各種申請を行うための起票画面(新規登録画面)を開いた段階で、ログインユーザーの組織情報と承認経路が定義されているいくつかのマスタアプリを参照し、それを元に、申請承認業務の最適化を図っているのですが、このマスタ情報の更新作業に多くの負担がかかっていたのです」と新井氏は説明する。

コーポレートエンジニアリング部 ITサービスブロック 新井 健太様
新井 健太様
コーポレートエンジニアリング部 ITサービスブロック

マスタ更新の具体的な流れは、業務部門から組織編成や人事異動の情報をExcelで収集し、この情報を基に組織変更と異動、入社、退職、休職などの情報を人事部門や総務部門が手作業でGoogle Sheetsの「入退社異動管理シート」に入力。さらに、このGoogle Sheetsのデータをコーポレートエンジニアリング部が手作業でkintoneの各種マスタプリに反映させるという手作業が前提の仕組みであった。

ビジネススピードの速い事業運営を行っている同社だけに、変化に合わせた機動力の高い組織をつくるための組織編成、中途入社が頻繁に発生するとのこと。

「私が入社した3月は、特に人事異動や組織変更が多いタイミングで、数百のレコードを作成・修正することもあり、とにかく大変な作業でした」と新井氏は当時を振り返る。

ワークフローを支える組織と人を管理する各種マスタの更新がほぼ手作業で行われていた
▲ ワークフローを支える組織と人を管理する各種マスタの更新がほぼ手作業で行われていた

【選定】最適なアプリ間連携やExcel管理の現場に負担をかけないkrewシリーズに注目

そんな手作業によるマスタ更新を改善するための手段として新井氏が注目したのが、グレープシティが提供するkrewシリーズだった。実は前職でkintoneを扱った経験があり、krewシリーズ自体も既知のプラグインだったのだ。

「入社や退職、組織変更、人事異動の情報はGoogle Sheetsで管理されていたので、ExcelライクなkrewSheetのUIと操作性があれば、現場にとってもkintone移行のハードルが大幅に下がるのではないかと考えました。kintoneアプリに情報を集約できれば、krewDataでマスタプリに取り込む形にデータを加工できるのでマスタ更新作業を自動化できます。手作業でのマスタ更新を見たとき、すぐにkrewシリーズで運用改善できるイメージが湧いたのです」と新井氏。

現場への展開については、いくつかプロトタイプを作成してお披露目したところ、UIや操作性がExcelと似通っているおかげで、大きなハレーションが起こらなかったことも大きな後押しとなった。

「krewSheetの利用手順書などを事前に用意することができなかったのですが、細かくレクチャーせずとも操作できるという声がローンチ後も現場から寄せられています。現場への展開要件にもうまく合致したものとなりました」と新井氏。

もちろん、Excelと全く同じ操作感ではないことで現場から意見が寄せられる可能性もあったが、例えば、ルックアップで関連付けたアプリのデータをkrewSheet上で参照したりコピーしたりできるので同じ情報を何回も入力せずに済むことや、関連先の情報が更新されても1クリックで最新の情報の値を取得できるなどのkrewシリーズ導入のメリットを説明したところ、現場からは好反応だったという。

コピー元の最新の値を取得できるkrewSheetのルックアップ(データはダミー)
▲ コピー元の最新の値を取得できるkrewSheetのルックアップ
(データはダミー)

「操作について多少の慣れない点は発生する可能性もありましたが、それを上回るメリットがあるのであれば、習熟していこうという前向きな反応をもらえたのです」と新井氏。

入退社異動管理シートをkintoneに置き換えた後にデータを加工して異なるkintoneアプリに登録するソリューションにはクラウド上で活用できるiPaaSなども選択肢になってくる。しかし、kintoneの細かな仕様に対応することは難しいと判断したという。

「例えばkintoneアプリのテーブルに登録された情報を1つずつレコードに変換するような場合、krewDataであれば “テーブル展開コマンド” を使うことで簡単に実装できます。iPaaSでもできないことはないのですが、さまざまなコネクターを介しての複雑な処理が求められます。せっかく導入したのにフロー作成に苦労してしまう未来が見えたため、kintoneのアプリ間連携が可能な唯一無二のプラグインとして、krewDataが最適だと判断したのです」。

その結果、kintoneで構築したワークフローの利便性をより高めていくためのプラグインとして、krewシリーズが選ばれることになったのだ。

【効果】kintone活用を加速させるkrewシリーズ、マスタメンテナンスの効率化を実現

■ kintoneによるワークフローの効率的な運用とアプリ間連携を可能にするkrewシリーズ

krewシリーズの導入により、組織編成や人事異動の情報を入力していたGoogle Sheetsの「入退社異動管理シート」は、大きな混乱もなくkrewSheetを適用したkintoneアプリ「入退社異動管理アプリ」にスムーズに置き換えられた。また、同時に組織の新設や廃止を管理する「組織情報管理アプリ」も追加。こちらもkrewSheetを適用して最新情報を管理するアプリだ。登録作業は既存のマスタプリのデータから組織情報や人事情報をkrewSheetのルックアップで取得することにより、手入力を最小限におさえるよう工夫している。この2つのアプリの情報をkrewDataで各種マスタアプリに反映することで、マスタメンテナンスを自動化することに成功した。

「入退社異動管理アプリや組織情報管理アプリでは、krewSheet上で条件に応じてその行をグレーアウトするなど、色分けによるステータスの可視化も実装できています。対応漏れなども一目で把握できるようになっています」と新井氏。

なお、労務システムや経理システムなど基幹システムへの反映は入退社異動管理アプリの情報から用途に合わせたCSVで出力して取り込んでいるとのこと。

krewSheetを適用した管理アプリを設けkrewDataでマスタを自動更新。さらに連携用のCSVエクスポートも実現
▲ krewSheetを適用した管理アプリを設けkrewDataでマスタを自動更新。さらに連携用のCSVエクスポートも実現
krewSheetを適用した入退社異動管理アプリの実際の画面
▲ krewSheetを適用した入退社異動管理アプリの実際の画面
krewSheetを適用した組織情報管理アプリの一覧画面
▲ krewSheetを適用した組織情報管理アプリの一覧画面

krewSheetは、これ以外にも申請・承認用のアプリに適用されており、例えば契約書の書面締結作業を担当部署へ依頼するワークフローアプリでは、作業担当部署内で対応進捗を可視化するメモの項目が設けられ、そのメモ欄を用いることでレコードごとの細かい進捗の共有が行われている。

「作業担当部署で、担当メンバーが複数いる場合など、進捗メモを一覧で確認したい、メモに進捗を残す入力作業を一覧画面から行いたいというニーズがありました。そこで、メモの項目を含むいくつかの列項目を抜粋しkrewSheetにて一覧化しました。結果として、進捗メモは一覧から更新・確認できるようになっています。契約作業を依頼するワークフローの一部として、krewSheetを活用している一例です」と新井氏は説明する。

他にも、個人情報の取り扱いに関する管理徹底のために、従来はGoogle Sheetsで管理していたものをkrewSheetに移管し、個人情報の種類やその形式、取り扱い量などがより厳格に管理できる環境も整備している。Google Sheetsで個別管理していたときには、管理されている情報に対して誤操作により修正が入るリスクがあるだけでなく、登録や申請申告の証跡は手作業でリンクを貼り付けるといった手間がかかっていた。今はkintoneでマスタ登録申請を実施したうえで、krewSheetで管理、修正履歴も含めてレコードごとに記録が残せるようになり、個人情報の的確な管理が可能になっている。

■ ワークフローにおける大幅な工数削減、業務効率化に貢献

マスタメンテナンスの業務はkrewSheet及びkrewDataを活用したことで、以前は手作業での情報修正や確認に3営業日ほどを要していたが、現在では自動登録が可能になり、確認含めて15分ほどまでに大幅な短縮が可能になっていると評価する。

入退社や昇降格、兼務、異動、組織変更に関する全ての情報がkintoneにて集約でき、ボタンを順番に押すだけで結果が確認できるようになっています。手作業で行っていた頃は、外部の労務システムなどにデータ投入できる形にデータ加工せざるを得ませんでしたが、今は連携に必要な形にkrewDataで加工し、そのままインポートするだけで済みます」とその効果を実感する。

また、krewSheetにてGoogle Sheetsをアプリ化できたことで、ドロップダウンや選択式で必要な情報が簡単に呼び出せるようになり、マスタ化したことで表記揺れもなく、メンテナンスの手間が大きく軽減できている。

「kintoneアプリを入力する担当者からは、全体的な作業感として最大5割程度の作業時間削減につながったという声も寄せられています」と新井氏。リリースまで公開できない情報についても、レコードごとに閲覧を制限するなど配慮しながら、ExcelとGoogle Sheetsでの管理に比べて業務効率を大きく向上させられていると評価する。

現在kintoneは、1,500名ほどの全社員が利用するワークフローの基盤となっており、各種の申請・承認業務に活用されている。すでに使われていないアプリやアーカイブとしてのアプリも含めて1,000を超えるアプリが展開されているという。インターフェースとしてkrewSheetを採用しているアプリは30ほど、krewDataでデータ連携に関わるアプリも30ほど。要望に応じてkrewSheetを現場に紹介しながら、必要に応じてkrewDataによるアプリ間連携を行っている状況だ。krewSheet自体で情報の管理やメンテナンスを実施しているのは、各部署の管理職も含めて100名ほどとなっている。

■ krewシリーズにて情報集約を加速、コーポレートITならではの経営戦略実現を進める

今後については、今は業務部門で組織編成と異動情報を作成・提出しているExcelも、krewSheetを適用したkintoneアプリに移管し、直接kintoneにデータが入るようにし、krewDataにて入退社異動管理アプリに自動連携する仕組みづくりを進めているという。これが実現すれば、マスタメンテナンスはExcelやGoogle Sheetsから脱却でき、全てをkintoneで自動化できるようになる。

「現場の組織変更や人事異動情報が直接kintoneに入ってくれば、人事部門での転記は不要になり、確認だけで済みます。また、現在は異動や組織変更にフォーカスしていますが、電話番号情報などいまだにGoogle Sheetsで管理されているマスタ情報もkrewシリーズで運用できるのではといったアイデアが現場から寄せられるように。使い方の拡張に対するヒントが現場から上がってくるなど、意識改革につながっていることも効果として大きい。いい未来が描けそうな感覚を持っています」と新井氏は期待を寄せている。

現在はスクリプトによるADのアカウント作成を行っているが、情報ソースとなるCSVは手動作成になっている。これをkintoneアプリからの申請によるデータを用いて自動化する環境整備も進めているという。今後も、SaaSに閉じた活用だけでなくオンプレミスも含めた全体最適に向けた環境整備を進めていきたい考えだ。

「私はkintone及びプラグインを中心としたSaaS群について、FASHION TECHの推進に欠かせない社内システムだと考えています。当社の掲げる経営戦略である“MORE FASHION × FASHION TECH”に繋がる、コーポレートITならではの方法を模索して貢献していきたい」と今後について語っていただいた。