導入事例

ヤンマーエンジニアリング株式会社様ロゴ

ヤンマーエンジニアリング株式会社様

業種:卸売業・小売業

部署:全社

利用用途:財務分析/工事案件管理/予算/予実管理

使用製品:krewSheet/krewData/krewDashboard

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事例公開日:2022年7月29日

※ 事例記事の内容や所属は取材当時のものです。

予算管理の基盤から多彩な業務への活用が広がるkintoneの定着
拡張に大きく貢献するkrewシリーズ

ヤンマーグループが提供する舶用エンジンのメンテナンスや部品供給などアフターサービスを専門に扱っているヤンマーエンジニアリング株式会社では、企画部門における情報共有などの業務基盤としてkintoneを導入し、経営層への報告業務プロセスの効率化を進めるべく、krewDashboardを中心にkrewシリーズを活用している。その経緯について企画管理部 企画管理グループ 紀平智志氏にお話を伺った。

【課題】導入したものの十分に活用されていなかったkintone

1958年に設立され、ヤンマーが提供する船舶用エンジンのメンテナンス、修理、部品供給などのアフターサービスを行っているヤンマーエンジニアリング株式会社。世界各地でヤンマー製舶用エンジンを搭載した船舶が稼働しているため、ギリシャやアラブ首長国連邦など海外に独自拠点を有し、グローバルにアフターサービスを展開。本船の中間・定期検査前に最適な整備計画を提案することから、エンジニアリングコンディションの診断、整備、取り扱い説明の実施など各種テクニカルサービスを提供している。省エネルギーな暮らしや安心して仕事や生活ができる社会などの実現に向け、ヤンマーグループとして掲げるブランドステートメント「A SUSTAINABLE FUTURE」を軸に、持続可能な社会づくりに向けた活動にも積極的だ。

そんな同社において、経営分析や社内統制を担っているのが企画管理部だ。

「経営分析については、財務など定量的な情報や現場にある定性的な情報を収集したうえで分析し、経営層に発信するような業務を行っています」と紀平氏は説明する。

企画管理部では、従来Excelやメールを中心に情報共有および管理を行ってきていたが、CRMやSFAなど各種デジタルツールが普及してきた2015年ごろから、業務効率化に役立つITツールの検討を進めてきた経緯がある。そこで、拡張性や価格面などを考慮した結果、サイボウズのkintoneを選択し、経営管理部内での活用が進められてきた。

ヤンマーエンジニアリング株式会社 企画管理部 企画管理グループ 紀平 智志様
紀平 智志様
企画管理部 企画管理グループ

ただし、紀平氏が経営分析を行うべく、2018年に同社へジョインした際には、導入したkintoneが十分に活用できておらず、シンプルに企画管理部内のto DO管理やスレッドによる部内の情報共有用途がその中心だった。

「もともとプログラミング経験が無いなか、ノーコードでアプリケーション開発が可能なkintoneを見たとき、非常に便利なツールで、すぐに興味を覚えました。そんなkintoneの活用をさらに加速させるための環境整備を上長から求められたのです」と紀平氏は当時を振り返る。

【選定】kintone内の情報を見せる化、分析できる機能に注目したkrewシリーズ

kintone活用を進める際に検討したのは、まずは財務分析を行う前段階として手間のかかっていた、Excelによる予算計画の策定に関する業務をkintoneにてアプリ化することを計画。

「各部門長が予算を作成する際に直接書き込めるデータベースとして活用できるようにしようと考えました。そこでパートナーから提案いただいたのが、krewシリーズでした」と紀平氏。

紀平氏は当初からkintoneをJavaScriptでカスタマイズするのではなく、標準機能とプラグインを活用することで必要な機能の実装を検討していたという。

「導入当初はパートナー企業に支援してもらってアプリを開発しようとも考えましたが、外部に依存しすぎてしまうリスクも考慮した結果、内製を意識してプラグインを選択しました。krewシリーズがあれば、予算作成はもちろん、いろいろな情報を集約してkintone上で見える化することもシンプルに内製できると考えたのです」。

ただし、いきなりkrewシリーズを駆使して予算計画の仕組みを実装するのは、システム開発経験のない紀平氏にとっては高いハードルだった。そこで、社内の財務情報を分析するツールとしてkrewDashboardから使っていくことを決断。

「krewシリーズのなかでも最初にいいなと感じたのはkrewDashboardでした。グラフで必要な情報がすぐに集計、表示できるなど、活用がイメージしやすかった」と紀平氏は評価する。

また、情報の一括更新やメンテナンスのためにはkrewSheetが、予実管理といった複数アプリの情報を加工・集計する処理にはkrewDataが必要になるということで導入を決定。kintoneの活用を加速させるためのプラグインとして、krewシリーズ3製品を活用することになったという。

【効果】kintone活用を強力に支援するkrewシリーズ

■ スライサー機能で自由に分析できるkrewDashboard、krewSheetやkrewDataの活用も

現在は、損益情報や在庫情報など定量的な財務に関する情報を集約する財務情報ポータルとともに、Excelで行われていた報告書など定性的な情報をkintoneに展開した経営情報ポータルを企画管理部で主に構築、運用している。全社的には紀平氏が各部門に対して個別にアプローチし、社内にkintoneファンを広げていくことに成功。テスト的な活用も含めてアプリは650を超える規模にまで膨らんでいるという。

「テスト的に作ってみたというアプリも多いため、実運用のなかで稼働しているアプリは半数以下かもしれません。それでも、まずは触れてもらえることを重視して、全社員にアプリ作成の権限を付与して利用してもらっています」と紀平氏。

ただし、プラグインに関しては使い方を間違えてしまうと影響が大きくなる可能性もあるため、企画管理部側に相談があった段階でマンツーマン指導を行い、限られたメンバーにのみ権限を与えている状況だ。

特にkrewDashboardが活躍しているのは、企画管理部および各部部門長が活用する財務情報ポータルで、グラフによる可視化や見たい切り口に自由に切り替えて分析できるようになっている。

「従来は基幹システムからデータを出力してExcelにて加工、それを各部門に対してメール配信していました。今は基幹システムからCSVでkintoneにデータを取り込むだけで、自動でグラフや表が作成でき、いつでも自由に部門長がアクセスできます。krewDashboardのスライサー機能を使うことで、好きな切り口で確認できるような情報提供が可能になるなど、資料作成や配信の手間を大幅に削減できました」と紀平氏。

▲	課題:Excelによる実績データの集計と加工・分析に時間がかかり、経営状態の把握が遅れる
▲ 課題:Excelによる実績データの集計と加工・分析に時間がかかり、経営状態の把握が遅れる

▲	効果:kintone + krewDashboardにより、自動で財務情報をグラフ化。いつでも見たい時にアクセス
▲ 効果:kintone + krewDashboardにより、自動で財務情報をグラフ化。いつでも見たい時にアクセス

▲	krewDashboardを活用した財務情報の画面
▲ krewDashboardを活用した財務情報の画面

krewSheetについては、アンケート調査の送り先を各拠点に記載してもらうためのアプリに適用するといったシンプルな活用もあれば、基幹システムの案件管理情報をkintoneに取り込み、工事の進捗状況に対して工期の遅延などがあれば色分けして直感的に把握する案件管理アプリなど、さまざまな用途に活用されている。

「案件に関わる全部門のメンバーで一つの工程情報が共有できるようになりました。急遽対応が必要な場合は、コメントなどでコミュニケーションしながら案件管理を行っています。また案件ごとに表示される関連レコードでは、工事原価の詳細な変遷や過去の工事内容などが把握しやすくなっています」と紀平氏は説明する。

▲	krewSheetを適用した工事案件画面。サブウィンドウや関連シートにより入力と視認性がアップ
▲ krewSheetを適用した工事案件画面。サブウィンドウや関連シートにより入力と視認性がアップ

krewSheetの可能性については多いに期待しており、コロナ禍の影響で企画管理部内の業務シフトを作成するカレンダーアプリに活用したり、マスター系アプリ内の大量データを一括で更新したりといった用途でも利用しているという。

krewDataについては、krewSheetで実現している工事に関連した案件管理において活用している。具体的には、CSVにて基幹システムから取り込んだ案件情報を入力用のアプリにインポートし、全案件に工事の完成フラグを強制的に付加、そのあとkintone上で入力している最新の進捗情報と付け合わせを行い、未完成の状態かどうかの最新情報が的確に把握できるようkrewDataを活用している。

「基幹システム側の案件情報に一覧性がないため、案件ごとに完成しているかどうかが判別しづらいなか、最新情報はkintone側が持っています。そこで、毎日krewDataを使って基幹システム側の情報とkintone側の最新情報の付け合わせを行っています」と紀平氏。

基幹システム側で持っている完成予定日を過ぎていてkintone側で完成した状態になっているものは、基幹システム側を操作して完成手続きを行うなど、基幹システムの情報メンテナンスにも役立てている。他にも、部品の補修や下取りサービスを行っている事業部の案件管理にも活用しており、案件ごとの実績と整備担当者の管理アプリの付け合わせを実施し、担当者ごとの実績管理を行っている。

▲	krewDataを使い、日次のフラグ管理と月次の締め処理を行っている
▲ krewDataを使い、日次のフラグ管理と月次の締め処理を行っている
■ kintoneに対して拡張性を実感してもらい、風土づくりに貢献するkrewシリーズ

krewシリーズを導入したことで、kintoneで業務改善したいと考えている社員に対して拡張性があることが実感してもらえるようになったことは大きな効果だという。

「krewSheetのおかげで、kintoneでExcelのようなとっつきやすい画面が提供できるようになり、使ってみようと考えてもらいやすくなっています。またITに慣れていないメンバーであっても、多少高度ながらExcelで行っていた大変な集計作業をkrewDataのボタン1つで実行できるなど、適用の幅を広げてくれる。kintoneの定着や活性化に大きく貢献しています」と紀平氏は評価する。

現場の各業務において改善や効率化に大きく寄与している部分はあるものの、当初から数値的な効果は意識しておらず、全体的に業務の負担が減ったと感じてもらえることが評価できるポイントだという。

「数値を追いかけるというよりも、kintoneによって業務改善できるという風土を根付かせていきたい。その風土づくりにkrewシリーズが役立っています」と紀平氏。krewシリーズについては、これまで導入したkintoneプラグインのなかでも一番使いどころが多いソリューションだという。

「それぞれ機能がはっきりしている割に、いろいろな業務のシーンで活用できる印象です。確かに難しい部分も一部ありますが、kintoneの標準機能で悩んでいた部分に対して、改善が進むようになったと社内からも好評です」。

グレープシティについては、使い方についての情報発信が積極的に行われているという印象を持っており、ユーザーに刺さりやすい新機能を提供してもらうことで、やる気を引き出してくれていると高く評価する。

「よくTwitterなどでkrewシリーズの新機能リリースやkintone界隈のエバンジェリストと一緒になっての情報提供など、いろいろ発信されている情報がとても役立っています。最近の新機能では、Excelのピボットテーブルのように表示できるXross(クロス)モードに可能性を感じており、予算管理の仕組みに適用できそうだと考えています。」と紀平氏。

■ 啓蒙活動をつづけながら、運用管理体制の強化や予算管理の実装などを目指す

今では多くの部署における多彩な業務にkintoneおよびkrewシリーズが活用されているが、今後はアプリの乱立を防ぐための権限付与からアプリの棚卸、運用管理体制の整備など、全社を挙げた活用に向けた課題に対して手を付けていきたいという。

「今は私の方でチェックするなどマンパワーで管理ガバナンスを効かせていますが、いずれはしっかりとした体制を整備してきたい」とのこと。

紀平氏のなかでの業務改善については、CSVを使って手作業で行われている基幹システムとの連携部分だ。「CSVを使って手作業でkintoneに取り込むような作業は、本来付加価値を生まないところ。手軽にできる部分があれば削減していきたい」。

また当初krewシリーズを導入した端緒となった予算管理については、現在テスト実装の段階にあり、この運用を軌道に乗せていきたいという。

「予算管理については、現時点では各部門にExcelで予算を作成してもらい、それを我々の方で集計したうえで調整を実施し、最終的にヤンマーグループの基幹システムに取り込みやすい形にデータを加工しています。この取込加工の部分でkintoneを活用している状況で、krewSheetで入力できるような機能も実装済みです。最終的にはkintoneで全て完結できることが理想的ではありますが、いろいろ試験運用のなかで模索している状況です」。

現場が直接見て触れる機会の多いkrewSheetやkrewDashboardについては、啓蒙活動を続けながら活用の広がりに期待しているという。

kintoneは基幹システム周りの業務改善に向いているツールだと常々思っています。全ての業務をkintoneに集約するというよりも、基幹システムに任せることは基幹システムでやってしまう方が理想的。Excelでうまく動いている業務を無理やりkrewSheetにて脱Excelする必要もありません。うまく使い分けていきたいですね」と紀平氏に今後について語っていただいた。