導入事例

株式会社信州ウェイスト様ロゴ

株式会社信州ウェイスト様

業種:その他

部署:全社

利用用途:販売管理

使用製品:krewData

株式会社信州ウェイスト様 メインビジュアル

事例公開日:2022年12月8日

※ 事例記事の内容や所属は取材当時のものです。

販売管理パッケージの利便性をkintoneおよびkrewDataで再現
相殺や消込処理など複雑な仕訳業務の効率化を実現

廃棄物処理を中心に事業を展開する株式会社信州ウェイストでは、kintoneを活用して受注から請求処理に至る各種事務業務の仕組みを構築しており、マニフェストと呼ばれる産業廃棄物管理票の作成や複雑な相殺処理、消込処理が必要な販売管理業務の効率化に向けてグレープシティのkrewDataを採用している。その経緯について、代表取締役 小林 源吾氏および事務担当 三宅 智子氏、そして経理事務やシステム構築を外部受託している小林 美木氏にお話を伺った。

【課題】業界ならではの特殊な業務フローを実装するためにkintoneを採用

「人に喜ばれ、必要とされ、愛しまれる企業となる」を企業理念に、一般・産業廃棄物の処理事業を展開している株式会社信州ウェイスト。廃棄物処理だけでなく、廃プラスチックのリサイクルや金属、古紙など資源物の買取販売、一般家庭の困りごとを解決するサービス「源さんで一軒落着!」といったさまざまな事業を展開。天竜川という大きな水源の上流域である長野県上伊那地域を中心に事業を展開していることから、資源の有効活用や環境保全活動にも積極的に取り組んでいる。業界に古くからある体質やイメージを払拭し、新たなイメージを築くべく、若手を中心に社員研修を充実させながら、属人化した業務体質の脱却を目指してIT化への投資も積極的に行っている企業だ。

そんな同社では、以前から業務効率化に向けた環境整備に取り組んでおり、産業廃棄物回収の受注から、請求業務に至るまでの事務手続きの効率化を図っていた。その仕組みづくりに向けて、異業種交流会をきっかけに知った別業界のシステムを産業廃棄物処理のプロセスに作り変えて活用できるよう、システム構築を数年間続けてきた経緯がある。

「異なる業界ではありましたが、業務効率化を実現している企業が自前で開発したシステムをベースに、我々の業務に適した形に作り変えるべく、受注から請求処理に至る一連のシステム化を進めていました」と小林社長は当時を振り返る。

しかし、マニフェスト運用など産業廃棄物業界ならではの特殊な帳票や独特な業務フローを実装するための業務理解がシステム開発企業との間で十分に進まず、なかなか自社の業務に適用できない状況が続いていたという。

そんな折、知人の紹介から新たなパートナー (agentlab:以下エージェントラボ)の浅比氏と知り合い、そこで提案を受けたのがkintoneだった。業界的に特殊な運用が必要なため、アジャイル的なアプローチで現場に適した業務ロジックを実装することが求められていたのだが、その環境として適しているkintoneを活用し、業務基盤を整備することになったのだ。

代表取締役 社長 小林源吾様
小林 源吾様
代表取締役 社長

【選定】アプリ間の集計などkintone標準機能では難しい処理に適したkrewData

kintone導入により数多く保有している資源回収用のトラックごとに、収集場所や回収時間などをスケジュールするための受注/配車の仕組みを構築し、これが成功した。続いて販売管理業務の領域をkintoneにてシステム化する計画を立てたという。

お客さまから産廃物を引き取る場合、回収に対する売上と資源としての仕入が同時に発生するため、複雑な相殺処理が発生します。販売管理パッケージの弥生販売を使って独自の運用を行っていましたが、売上と仕入が別の業務として構築されていたためできれば一括で処理できるような環境が理想だったのです」と小林氏。

また、弥生販売はオンプレミスで利用していたために同時に作業ができないことやオフィス以外の場所から利用できないといった働き方の面での課題もあり、社内の仕組みを全てクラウド化し、どこからでも事務処理ができる環境への移行も期待されていた。そこで、弥生販売で実現していた業務をkintoneで再現することになった。

しかし、前述のように受注が売上と仕入れの両面を持つ業務形態であるため、仕入金額のほうが回収費用よりも大きい場合は請求ではなく逆に顧客への支払いが発生するなど、高度な費用計算が必須で、条件ごとに売上伝票と仕入伝票をレコードとして自動生成する機能が必要だった。さらに、請求についても、複数ある売上伝票と仕入伝票を名寄せして顧客ごとにまとめた形で請求書を発行しなければならず、kintoneの標準機能だけでは実現することが難しい面がでてきたのだ。

課題の概念図
▲ 複雑な相殺処理と多様な入金方法による消込作業が煩雑

そこで注目したのが、アプリ間の情報を柔軟に加工・集計できるkrewDataだった。

「もともと、入金自体がクレジットカード決済や現金払い、銀行引き落としなどさまざまな方法で行われていたため、会計システム側では複雑な相殺処理を行った場合の入金額の消込が対応しづらかったんです。そこで、kintone側で消込み処理を行ったうえで会計システムにデータを渡せるような仕組みが必要でした。その処理に最適なものとしてエージェントラボさんから提案を受けたのがkrewDataだったのです」と小林氏。

当初は、会計システムの刷新計画があり、新たな会計システムにて消込処理がうまくできないか試してみたものの、売上金額と仕入金額が逆転するような処理の対応が難しく、消込処理がより複雑になってしまう状況にあった。そこで、最終的には売上伝票と仕入伝票を付け合わせたうえで請求処理につなげていくための仕組みづくりとして、krewDataが採用されたという。

小林 美木様
小林 美木様

【効果】システムの一元管理に向けた仕組みづくりへkrewDataが大きな原動力に

■ 相殺・逆相殺や消込処理など販売管理の機能をkintone+krewDataにて実現

現在はkintoneにて販売管理を中心にアプリを運用しており、回収した資源の在庫管理や5S活動管理シート、資源回収の際に必要な車両の点検を行う車両管理、出張旅費含めた経費精算、雇用契約から保険、契約書、有給管理といった労務に関連したアプリなど各種業務にkintoneを活用。アプリ間のデータ集計やレコードの自動作成などさまざまな処理をkrewDataにて実装している。細かなものも含めて20ほどのフローが運用されているという。

販売管理の部分については、顧客を軸に売上伝票アプリや入金伝票アプリのデータをつけ合わせることで相殺処理を行うだけでなく、前回の請求書をもとに残高情報を参照したうえで相殺処理を行っている。また、顧客の要望に応じて伝票ごと、もしくは売上伝票を月単位にまとめて税金計算を行い、各社に合わせた締め日もうまく吸収しながら、これらの情報を全てkrewDataで集計。請求書発行や残高管理など総勘定元帳の作成、会計システムが持つ入金データとkintoneが持つ請求データをマッチングさせることでの消込処理など、さまざまな業務フローをkrewDataで実装している。

売上データと入金データから税金計算を行い顧客ごとにまとめた請求データを発行
▲ 売上データと入金データから税金計算を行い顧客ごとにまとめた請求データを発行

通常であれば、販売管理パッケージを使って請求データと会計ソフトで管理する入金データを比べて消込処理を行う必要があるが、この処理が非常に煩雑になって消込処理がうまくシステム実装できないケースが多いが、今回krewDataを活用したことで、kintone側でシンプルに消込処理ができるようになったことが大きいという。

kintone + krewData により仕入れと売上の相殺処理を自動化。消込にも対応
▲ kintone + krewData により仕入れと売上の相殺処理を自動化。消込にも対応

「今は回収時の報告書をもとに売上伝票を手作業で入力していますが、回収担当のドライバーが現場で重さを測定し、その結果をスマートフォンで入力することでkintone上の‘売上伝票へ自動的に取り込まれるような仕組みづくりにも取り組んでいます。この処理にもkrewDataを活用していく計画です」と三宅氏は説明する。

これらの処理が具現化できれば、売上から請求までの処理が一気通貫で実現することになる。また、回収してきた資源の在庫管理もkintoneにて行われており、在庫情報をもとに出荷の引き当てを行い、その段階でkrewDataにて納品書の作成を行っている。出荷自体は一定の期間で複数回にわたって行われるケースがあり、品目ごとの合計値を算出する際にもkrewDataにて計算を行うことで、可視化しやすくなっている。

また、マニフェスト作成については、公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センターが提供するJWNETと呼ばれる電子マニフェストシステムに対して、顧客である排出事業者が登録した情報をCSVにて取得した上でkintoneに取り組み、マニュフェストを作成。また、紙でマニフェストを渡された場合は、同社にて情報を全てkintoneに転記したうえで、krewDataにて電子マニフェストの情報と合算、顧客ごとに受入料や運搬料、処分料などを計算している。なお、同社が処理を二次委託しているケースでもマニフェストを作成してkrewDataにて集計を行っており、最終的に集計したものを報告書として県に報告している。

「最終的には社内のシステムを一元管理するという大きな目標を掲げており、krewDataがそのための大きな原動力になっているのは間違いない」と小林社長は力説する。

電子マニフェストと紙のマニフェストをkintoneに取り込み、krewDataで報告書を作成
▲ 電子マニフェストと紙のマニフェストをkintoneに取り込み、krewDataで報告書を作成
■ システムのクラウド化により働き方にも変化

kintoneおよびkrewDataにて販売管理を中心とした各種業務基盤を整備したことで、出社しない働き方にも柔軟に対応できるようになった。入力タイミングを意識せずともいつでも作業できるようになったことはクラウド化のメリットだという。

「個別に販売管理を運用していた時は、発行した請求書を個別にスキャンして保管する運用が必要でしたが、kintone内に情報があることで、事務作業が大幅に効率化できました」と三宅氏は高く評価する。

実際には500枚を超える請求書のスキャンを毎月実施してきたため、その作業が不要になっただけでも数時間の業務効率化に貢献している状況だという。また、見積単価が顧客ごとに変わる場面もあり、その都度過去の見積を探したり営業に確認したりしながら入力していたが、kintone内に過去の情報が蓄積されているため、確認せずとも過去の情報が確認しやすくなった点も大きい。

三宅 智子様
三宅 智子様
■ JavaScriptが書けないフラストレーションをカバーするkrewData

krewDataの利便性について、今後の期待も含めて高く評価していると小林氏。

「これまで手作業で定量的、定期的に実施するような業務については、krewDataを駆使することで手間が大きく減らせるようになるため、作業効率はより向上していくはずです。現時点でも効果が得ていますし、これからも業務効率化に大きく貢献してくれると期待しています」

もともとMicrosoft Accessを扱った経験を持つ小林氏は、自身でkrewDataにてフローを設定しながらマニフェスト運用などを行っているが、プラグインを活用することのメリットは大きいと評価する。

「JavaScriptが書けないフラストレーションを、krewDataをはじめとしたプラグインがうまくカバーしてくれていて助かっています。使い勝手についてもそれほど抵抗感はありません。もっと計算式を駆使する方法を学びたいと思っていますが、私のような素人でも感覚的に使える部分も少なくありません」とその使い勝手の評価も高い。

krewDataに関して不明点があれば、基本的にパートナーの支援を仰ぐものの、サポートセンターへ問合せした際にはすぐにメールでの返信があるなど、グレープシティの迅速な対応を評価する。

「私自身もkrewDataを使ってフローを設定しましたが、ホームページ上で紹介されているチュートリアルが結構役に立ちました。チュートリアルがあることで、どんなことができるのか、どう展開していけばいいのかが分かりやすく理解できます。自ら勉強できる環境が用意されていることはとても助かっています」と小林氏は評価する。

今回kintoneおよびkrewDataの提案から開発、運用支援を継続的に行っているのがエージェントラボだ。エージェントラボについて小林社長は、「特殊な運用も含めて我々の話をしっかりと汲み取っていただき、目先の改善ではなく広い視野に立ってやるべきことをしっかりと具現化してくれています。エージェントラボがいないと成立していなかったはずで、その存在は非常に大きい」と高く評価する。

小林氏も、的確に優先順位をつけながら毎週打ち合わせをオンライン会議で行いながらアプリを作っていくなど、同社にあった進め方で業務効率化に資する環境づくりを支援してくれたと評価が高い。

■ 販売管理以外の領域へ展開しながら、業界全体の底上げに貢献したい

もともと同社では、売上から請求までを一気通貫で実現できる仕組みを整備することを目標としており、その環境づくりを今後も強力に推し進めていきたいと小林社長は語る。

「回収担当者が現場で入力したデータがそのまま請求までつながり、マニフェスト関連の報告書作成まで流れていくのが最終目標です。すでに、運搬を行う現場担当者も勉強会に参加してもらうことでビジョンの共有を進めています」。また、同様の仕組みを同業他社にも横展開していきながら、業界全体の底上げにつなげていきたいと意欲的だ。

現状は販売管理の領域を中心にシステム化を進めているが、他の領域についてもkintone化を進めていきたいと小林氏。

「信州ウェイストに対しては、アプリ自体の種類も増やしていきながら、人事関連や経理業務に関連したアプリも作っていくなど、kintoneおよびkrewDataをさらに拡張したい。また、世の中には小規模で人材不足に悩む中小企業も多いことから、kintoneやkrewDataを使って構築した今回の仕組みを使って、フォローアップしていけるようなことも進めていきたいですね」。

特に会計システムとの連携については、可能な限りkintone側で複雑な仕訳処理を実施して会計にデータを受け渡しできるよう、krewDataをフル活用していきたいという。全てのデータを集約していくことで管理会計をkintone上で実現し、kintoneを見れば経営戦略の立案に役立つような環境づくりについても期待を寄せていると小林社長は締めくくった。