導入事例

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山形県 酒田市様

業種:
自治体

利用用途:
DX基盤/乗船管理

使用製品:
krewData

山形県 酒田市様 メインビジュアル

事例公開日:2021年9月30日

※ 事例記事の内容や所属は取材当時のものです。

自治体業務システムにおけるブラックボックス化を排除
定期船予約に必要なアプリ間のデータ集計に欠かせないkrewData

重要港湾である酒田港を有し、庄内北部に位置する山形県酒田市では、デジタル変革を早急かつ着実に進めるべく酒田市デジタル変革戦略を策定し、自治体が行う住民サービスの手続きをデジタル化する際にkintoneを活用。そのなかで離島へ渡るための乗船予約アプリ内の情報を集計する業務に、グレープシティが提供するkrewDataを活用している。業務システムをブラックボックス化させない仕組みづくりに役立つkintoneおよびkrewDataの採用の経緯について、企画部 デジタル変革戦略室 室長 本間 義紀氏、同室 阿部 真裕子氏および市民部 定期航路事業所 佐藤 寿氏にお話を伺った。

【課題】市民に利便性を実感してもらえるサービスづくりに欠かせない内製化

■ 最高デジタル変革責任者の設置など、酒田市デジタル変革戦略を推進

最上川の河口に開けた肥沃な大地と日本海に面した港町で、2005年に旧酒田市、飽海(あくみ)郡八幡町・松山町・平田町が合併して新たに誕生した山形県酒田市。奥州藤原氏の遺臣36騎が地侍となって酒田湊(さかたみなと)を開き、その子孫となる鐙屋(あぶみや)や二木家、本間家、西野家といった酒田三十六人衆が商業を発展させた土地で、最上川舟運と北前船交易の結節点である港町として栄えてきた。現在は米を主流とする農業が産業の中心となっており、庄内平野で育った良質な庄内米と鳥海山の伏流水で造られる日本酒などが特産品のひとつに挙げられる。また、2003年に国土交通省からリサイクルポートに指定された山形県唯一の重要港湾である酒田港では、リサイクル関連企業の集積に注力するなど、新たな港湾整備に向けた取り組みも進められている。

そんな酒田市では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大を契機として、市民生活や産業など幅広い分野において新しい価値を創造するデジタル変革を早急かつ着実に進めるべく、酒田市デジタル変革戦略を2021年3月に策定している。「賑わいも暮らしやすさも共に創る公益のまち酒田」をビジョンに据え、「住民サービスのDX」「行政のDX」「地域のDX」の実現に向け、最高デジタル変革責任者(CDO)を外部から招へい。企業や大学と協力してデジタル変革推進による市民サービスの向上や地域課題の解決、デジタル人財の育成などを目的に、産学官共創の連携協定を締結するなど、自治体として強力にデジタル化を推進している。

山形県 酒田市 企画部 デジタル変革戦略室 室長 本間 義紀様
本間 義紀様
企画部 デジタル変革戦略室 室長
■ デジタル変革戦略室を中心に、全庁的なデジタル変革のために必要だったkintone

そのなかでDX戦略を強力に推進しているのが、デジタル変革戦略室だ。「2020年に支給された特別定額給付金の申請がオンライン上で行える仕組みを目の当たりにしたことがきっかけで、非接触が求められるコロナ禍においては市民の行政手続きをオンラインで実施できるようにすべきだと市長から要請を受けたのです。ただし、市民サービスのオンライン化だけでは手段が目的化してしまう。全庁的にデジタル変革を進めるべきだという議論を経て、推進体制を整備していくことになったのです」と本間氏は説明する。デジタルの恩恵を市民レベルで十分に感じてもらえる環境づくりが求められたのだ。

DX推進に向けた環境を整備するためには、ちょっとした変更で費用が発生してしまうようなブラックボックス化された仕組みから脱却し、内製化していくことで運用可能なホワイトボックス化された環境が求められた。そこで注目したのが、サイボウズが提供するkintoneだった。「市民が実感できるサービスを提供するためには、担当者が制度を分かったうえでどうオンライン化するべきかに頭を巡らせることが必要です。同時に、デジタル化によって自分の業務がどう効率化できるかについても考えられるよう、情報企画課という従来の枠組みではなく、全く新しい部署を立ち上げるべきだとお願いしたのです」と本間氏。その環境づくりに適した基盤として、ドラッグ&ドロップで簡単に仕組みが内製化でき、豊富なプラグインが柔軟に活用できるkintoneが選択されたのだ。

概念図

【選定】JavaScriptでは属人的に、最適なプラグインとして選択されたkrewData

そこで、kintoneの標準機能を可能な限り活用し、市民にデジタルの恩恵を実感してもらえるサービスづくりに向けて、さまざまな現場に声をかけるなかで最初に手を挙げたのが、日本海上に位置する山形県唯一離島である飛島(とびしま)への定期航路を運用する定期航路事業所の佐藤氏だった。「定期船“とびしま”の運航予約については、数年前までは紙台帳で予約を管理していましたが、不便だったこともあってExcelを用いて予約状況を管理し、ピポットテーブルも駆使しながら運用していました。そんな折、COVID-19の影響で全便予約に運用が切り替わり、三密回避のために乗船可能な定員を半数にまで絞ったところ、わずかな席数をめぐって乗船予約の電話が殺到することに。この環境をうまく改善したいと考え、デジタル変革戦略室で開催したkintoneセミナーに参加し、ぜひやってみたいと名乗りを上げたのです」と佐藤氏は当時を振り返る。

山形県 酒田市 市民部 定期航路事業所 佐藤寿様
佐藤 寿様
市民部 定期航路事業所

そこで、定期航路の乗船予約システムをkintoneにて構築することになったのが、デジタル変革戦略室の阿部氏だ。「予約に関しては、乗船可能な定員管理を行うアプリとともに、乗船予約を行うアプリを作成したうえで、定員を超えたら予約できないようにする仕組みを整備する必要がありました」と説明する。定期船を予約する際には、1度の予約で何名乗船するのかを指定してもらうため、予約されたその日の人数を積算していくことが必要だ。また、キャンセルを受け付けた場合は積算した人数からマイナスするといった運用となるため、複数アプリの情報をリアルタイムに参照して人数を計算していくためには、JavaScriptを駆使しない限りkintone標準の機能では難しいことが明らかになったという。

そこでサイボウズに相談したところ、提案されたものの1つにグレープシティの提供するkintoneプラグインのkrewDataがあった。「JavaScriptでの開発を選択してしまうと、結局属人的なシステムになってしまうため、kintoneを導入する意味がなくなります。krewDataであれば、計算ロジックがフローから視認できるようになるため、属人化のリスクを最小限におさえられます。また、さまざまな集計や加工が可能なため、今後もkintone活用の幅を広げてくれるものになると考えたのです」と阿部氏。以前ブラックボックス化してしまったことの反省も踏まえ、標準的なプラグインで容易に内製化できるkrewDataを選択することになったのだ。

山形県 酒田市 企画部 デジタル変革戦略室 阿部 真裕子様
阿部 真裕子様
企画部 デジタル変革戦略室

【効果】業務の効率化に貢献、住民サービスのデジタル化の第一歩を踏み出す

■ IT経験がなくとも理解しやすいkrewDataがkintoneを強力にサポート

現在は、定期航路の乗船予約システムをはじめ、市が運営する体育施設予約に必要な利用者登録アプリや情報公開請求の申請アプリ、LINEを情報収集ツールとして活用したうえで市民や事業者に向けて実施したアンケートを集計するアプリなど、50以上のkintoneアプリを運用している。住民サービスのインターフェースとしてはkintone連携サービスのフォームブリッジを活用して登録申請などを受け付け、kintoneアプリにて情報を管理している。kintoneアプリの作成権限のあるアカウント自体は多くの課に配布されており、各課で行う申請関連アプリなど内製化できる環境が用意されている。「IT経験のない私でもちゃんと理解できるのがkrewData。使い方を教育していくことで、現場でも使っていただけるものになるはずです」と阿部氏は力説する。

krewDataについては、「予約簿」アプリ内で日々入力される予約人数の積算処理や予約キャンセル時の処理などに用いられており、日付ごとの予約可能な定員数を管理する「運行日定員管理」アプリとともに、定員数および予約数の差を管理している。「定期船の予約システムでは飛島発と酒田発でそれぞれ予約数を積算する2つのフローを用意しており、電話でのキャンセル時に人数をゼロにカウントするフローと合わせて3つを作成しています」と阿部氏。ちなみに、予約および予約キャンセルはシステム上から可能だが、予約人数の変更や日程変更は電話にて受け付けている。「予約の変更に関する処理もkrewDataにて可能になるよう新たなフローを作成した段階にあり、今後テストを行ったうえで実装していきたい」と阿部氏。

酒田港と飛島を結ぶ定期船「とびしま」
酒田港と飛島を結ぶ定期船「とびしま」
■ 職員の業務効率化を実現するkintone、使い勝手の高さが大きな魅力のkrewData

kintoneおよびkrewDataを組み合わせた定期航路の乗船予約システムが実装できたことで、これまで最大1日70件ほどの予約に関する電話応対業務が大きく削減でき、事業所が空いていない夜中でも予約が可能になるなど住民や観光客の利便性を大幅に向上、働く職員の業務負担の軽減にも役立っていると佐藤氏は評価する。「1日70件も電話があると、それだけで多くの時間がとられてしまう。お待たせせずに予約できる環境が整備できたことで、利便性向上に貢献する仕組みを整備できました」。また、現場ではiPadにて予約状況の把握や処理を行っており、天候不良時に便の変更などの連絡も、事務所の机上で処理せずとも変更や追加が柔軟にできるようになり、当初想定していなかった使い方が可能になったと佐藤氏。

概念図

krewDataのフロー設計などをkintoneアプリに適用した阿部氏は、その使い勝手良さを高く評価する。「ステータス更新時に予約データが容易に更新できるなど、一覧データ内に設置したボタン1つで最新の情報に更新できるようになっています。おそらくkrewDataがなければ、ボタン1つのトリガーで最新情報に更新できるような仕組みは難しい。もちろん、JavaScriptを駆使すればできるかもしれませんが、簡単な設定と操作だけで更新処理が可能になったのはkrewDataがあったからこそ」と阿部氏は評価する。

krewDataの設定については、インターネット上でグレープシティが公開しているマニュアルや豊富なテンプレートを参考にしながら、実装に向けたコツやアドバイスを受けるなど直接的な支援も行われている。初期の段階においては、必要なテスト環境の提供など柔軟な対応がありがたかったという。「私の方で作成したフローを見てもらい、具体的な指摘やアドバイスなどをいただくことができました。今は安定して動かすことができるようになっています」と阿部氏はグレープシティの支援を評価する。

■ オンライン手続きを強力に推進しながら、必要に応じてkrewDataの活用を広げたい

今後については、kintoneアプリの業務適用範囲を広げていきながら、定員管理が必要な用途や業務などへのkrewData展開を視野に入れているという。「例えば酒田市立酒田看護専門学校にて行うオープンキャンパスでは、COVID-19の影響で定員を絞っての開催が必要です。このオープンキャンパスの申し込みにもkrewDataを適用し、定員管理を効率的に行いたいと考えています。他の課が担当しているイベント申込に関しても、krewDataをうまく適用して同様の管理を行っていくことを検討しています」と阿部氏。実際にはkrewDataが持つ機能がフルに活用できていない部分もあるため、さらなる学びや提案を経て新たな用途にも適用していきたい考えだ。

現在酒田市では、オンライン手続きの推進や添付書類の省力化などを進めており、申請書の様式が決まっている3000ほどある手続きのなかでオンライン可能な手続きが870ほどある。本人確認などが必要な処理は除き、手続きのオンライン化に向けてkintoneおよびkrewDataを組み合わせた仕組みを整備していく計画だ。「脱ハンコに向けた取り組みを進めており、手続きのオンライン化に向けてデジタル変革戦略室一丸となって取り組んでいく予定です。外部から来る情報がデータ化されれば、行政内部の処理も一気通貫で処理できるようになるため、DXのさらなる進展が見込まれます。kintoneやkrewDataが生かせる場面も多い」と本間氏は期待を寄せている。