導入事例

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株式会社神戸製鋼所様

業種:製造業

部署:全社

利用用途:業務改善基盤

使用製品:krewSheet/krewData/krewDashboard

株式会社神戸製鋼所様 メインビジュアル

事例公開日:2023年06月12日

※ 事例記事の内容や所属は取材当時のものです。

現場ニーズに幅広く応えるプラグイン「krew」シリーズでkintoneの活用範囲を広げ、業務改善を実現するツールとして全社のDX推進を支援

鉄鋼アルミなどの素材系事業や産業機械などの機械系事業といった多様な事業を展開している株式会社神戸製鋼所では、現場主導で行う業務改善のためのローコード・ノーコードツールとして、以前から導入していたkintoneの活用を選択、現場の期待に応えるための汎用的な機能を提供するプラグインとしてkrewシリーズを導入している。その経緯について、IT 企画部 DX戦略プロジェクトグループ 今井 健太氏にお話を伺った。

【課題】導入済みのkintoneであれば、現場の業務改善活動を支援できると判断

1905年に創立した神戸製鋼所を発祥とし、現在は素材系・機械系・電力事業を中心に社会の発展に寄与するさまざまなソリューションを提供し続けている株式会社神戸製鋼所。鉄鋼アルミや素形材、溶接、機械、エンジニアリング、コベルコ建機、電力などの事業領域でグローバルにビジネスを展開しており、2021年に策定した中期経営計画において掲げた「安定収益基盤の確立」と「カーボンニュートラルへの挑戦」を最優先課題とし、「安全・安心で豊かな暮らしの中で、今と未来の人々が夢や希望を叶えられる世界。」の実現に向けた活動を強力に推進している。

そんな同社において、全社的なIT基盤の企画や計画の策定とともに、本社部門の業務システムに関する導入や運用管理を行っているのがIT企画部だ。事業部門ごとに大規模な組織を持つ同社だけに、各事業部門には情報システム担当の部署が存在している。IT企画部では、事業部門の情報システム担当と連携しながら、現場の業務改善に資する環境整備の支援を積極的に行っている。ただし、少数精鋭で活動しているために各現場からの期待に応えるだけのリソースが十分確保できない場面も少なくないという。そんな環境に対して、現場側から、自分たちで業務改善のための仕組みづくりを進められるエンドユーザーコンピューティング(以下EUC)を要望する流れが社内に生じ、市場の中でも大きな潮流となっていたローコード・ノーコードツールの活用を検討することになったという。

その候補として挙がったのが、以前からスポット的に利用されていたクラウド型業務改善プラットフォームのkintoneだった。

「社員の満足度調査やグループ全体で開催される会議の調整に必要な情報収集のためのツールとして、kintoneとWebフォームのフォームブリッジを組み合わせて活用してきましたが、業務改善基盤として幅広い用途で利用できているわけではありませんでした」と今井氏は説明する。

しかし、すでに導入済みのkintoneであれば、業務部門ごとに自分たちで業務改善を実施できる基盤として大きな投資をせずとも挑戦しやすく、現場への展開も容易だと判断し整備を進めることにしたという。

IT 企画部 DX戦略プロジェクトグループ 今井 健太様
今井 健太様
IT 企画部 DX戦略プロジェクトグループ
自由度と汎用性を備えた使いやすい業務改善の共通基盤を模索
▲ 自由度と汎用性を備えた使いやすい業務改善の共通基盤を模索

【選定】情報の一括更新など、幅広く現場のニーズに寄り添うkrewシリーズ

新たにkintoneを展開するにあたり、まずは本社部門を中心に各部署から有志を募り、kintoneの操作説明や開発方法に関する勉強会を開催。合わせて、現場の課題解決に役立つアプリをサンプルとしてIT企画部が作成し、現場に展開する活動を並行して行っていったという。ただし、kintoneの標準機能だけでは業務上の要件を満たせないという課題もすぐに顕在化した。

「kintoneをカスタマイズするにしてもJavaScriptを駆使してしまうとメンテナンス性に課題が出てきます。プログラミング知識がないメンバーでもアプリを開発できるEUC環境を整備するには、プラグインを活用することが必須だと考えたのです」と今井氏。

ただし、個別の要件ごとにプラグインを導入してしまうと、プラグイン同士が干渉する可能性や不具合が発生したときの調査が複雑化するといった安定稼働に懸念が生まれる。当然費用負担も大きくなる。こうしたことを考慮し、なるべく幅広い要件に応えられるものを中心に検討を重ねることにしたという。そんなプラグインの1つとして選択されたのが、グレープシティのkrewシリーズだった。

「kintone標準の場合、情報の変更や追加などは1件ずつ行う必要がありますが、複数データを一括更新できるようにしてほしいという要望がよく挙がっていました。また、製造業として工場から日々得られる生産データを集計したり、集めたデータをグラフ化して上層部にレポーティングしたりする機会も多いため、わざわざkintone内の情報をCSVで抽出してExcelに展開せずとも、kintone内でうまく表現できるものが求められたのです」と今井氏。

実際の現場では多くの業務がほぼExcelだったという。しかしExcelの共有では、数式が破壊される、同時更新ができない、作業用に各自がローカルにコピーしてマージすると最新がわからない、正しいデータを目視で探さなければならない、グラフ作成のためのデータ更新作業など…資料を作るために煩雑な作業が発生していたので、現場は疲弊。これをなんとかしたいという声が多数あった。

しかし、その一方で、Excelが持つ利便性の高さをkintoneに求める声も寄せられていた。その意味では、kintoneをExcelのように利用できるkrewシリーズはまさに現場に求められるプラグインだったという。ただし、インターフェースとしてExcelライクなものを求めていたわけではなかったと今井氏は本音を吐露する。

「kintoneという新しいツールを使うのであれば、Excelに縛られるよりも抜本的に変えていく方がいいという考え方が基本です。でも実際に導入した後に話を聞くと、見た目が変わると使いたくないという人も多かった。krewSheetのおかげで現場に新しいITを導入する際のハードルを下げる事ができ、結果としてうまく展開できたことは間違いない」と今井氏。

こうして現場の業務改善に必要なアプリ開発に役立つ汎用的なソリューションとして、kintone + krewを利用できるようになった事業部門では、独自に勉強会が開催されるなど、積極的に部門内の業務アプリを開発していこうという動きが見られるようになったという。

krewシリーズを現場に提供し、業務にフィットしたアプリを自由に開発できる環境を整備
▲ krewシリーズを現場に提供し、業務にフィットしたアプリを自由に開発できる環境を整備

【効果】工場で日々の管理に必要なレポーティング業務にkrewDashboardを積極活用

現在kintoneは、IT企画部が管轄する本社部門はもちろん、数百名単位でライセンスを展開している事業部門もあり、全社的には1,000名近くのライセンスを契約している。主に今井氏が管理しているのは、自部門(IT企画部)、財務経理部、人事労政部、建設技術部など計120名ほどが利用しているアプリの運用を担当している状況だ。

「krewシリーズを含めたプラグインを紹介するアプリを用意して詳細情報を全社に公開しています。適用したい場合は声をかけてもらい、事業部門のシステム部門やIT企画部で初期設定や開発支援を行っています。」と今井氏は説明する。

krewシリーズの活用状況は、krewDataはどうしても処理が必要なアプリのみで活用されており、全体でみるとkrewSheetが60%、krewDashboardが40%ほどの利用状況にあるという。

なお、krewシリーズ以外の汎用的なプラグインとしては、他にもフォームブリッジ、kViewer、kMailer、プリントクリエイター、gusuku Customine など、業務への適用範囲が広いプラグインを採用し、現場に必要な環境整備に活かしている。

IT企画部の活用例としては、グループ会社共通で活用しているITソリューションの費用負担を管理する関係会社請求と呼ばれるアプリを運用している。案件や請求先企業を管理するマスターアプリから情報を取得し、krewSheet上でITソリューションや会社ごとに利用状況を可視化している。サブテーブルなども利用しながら、変更や追加といったデータ更新作業や日々のチェックに役立てている。

「krewDataを使って、関系会社請求アプリから請求書発行アプリにデータを飛ばし、四半期ごとにプリントクリエイターにてPDF化してkMailerにてグループ会社に請求するようなフローもシステム化しています」と今井氏。また、IT企画部での予実管理アプリにデータを反映させるためにkrewDataにてデータ集計を行っているという。

krewDataを活用し関係会社で活用しているサービスやITツールの請求業務を自動化
▲ krewDataを活用し関係会社で活用しているサービスやITツールの請求業務を自動化
関係会社請求のデータ編集フロー図
▲ 関係会社請求のデータ編集フロー図

さらに、DX戦略の1つの目標となっている既存システムの再構築の進捗状況を可視化するために、krewSheetが持つXrossモードのピポットビューを活用している。

「要件定義など5つのステータスで既存システムの再構築の進み具合を可視化しています。事業部門が既存システムの刷新状況を入力すると、ピポットビューにてリアルタイムに進捗状況が把握できます。状況判断がリアルタイムにできるなど、進捗管理の効率化につながっています」と今井氏。

他部署の活用例では、例えば建設技術部では、krewSheetで工事に関連した案件別の進捗状況などを管理しており、担当者や工場ごとに案件や工事種別、工事費用など分析に必要な情報を可視化したうえでkrewDashboardにてレポーティングしている。また、設備の不具合報告などもkrewDashboardにて可視化しており、施工者や故障原因などもグラフ化することで必要な情報がすぐに把握でき、品質改善に向けた活動に役立てているという。特にkrewDashboardは工場を中心に各事業部門でのレポート作成ツールとして重宝しており、30を超えるアプリに適用されている状況だ。

krewDashboardを利用した建設技術部の工事案件の進捗ダッシュボード
▲ krewDashboardを利用した建設技術部の工事案件の進捗ダッシュボード
krewDashboardを活用した設備の不具合報告ダッシュボード
▲ krewDashboardを活用した設備の不具合報告ダッシュボード
■ 業務委託費用の削減やDX推進に求められる総労働時間の削減にも大きく貢献

krewシリーズを導入したことで、現場の要望に応えるkintoneアプリが展開しやすくなったことは間違いないという。

krewシリーズの導入後1年でkrewシリーズを適用したアプリが3桁を超えるほどにまで広がり、おそらくkrewシリーズがないと実現できなかったアプリも相当数出てきていると思います。数字が示す通り、kintoneによる現場の業務改善活動が進んでいることが何よりも大きな効果です」と今井氏はkrewシリーズの効果についてこのように評価する。

定量的な効果では、請求書をまとめてグループ会社に送付する業務を外部に委託していたが、関係会社請求アプリによって業務委託をやめ、年間200万円ほどの費用削減につながっているという。また、今井氏が管轄する部署だけでも、数千時間単位で業務効率化につながっているとその効果を実感している。

IT企画部ではDX戦略の一環として、kintoneやkrewシリーズの他にもさまざまなITツールを導入しており、これらを総合して社員の総労働時間の削減目標を策定。その数字の積み上げにもkrewシリーズを踏まえたkintoneが大きく貢献しているそうである。

krewシリーズについては、何よりも直感的に操作できることが大きな魅力だという。

krewSheetはまさにExcelのような使い勝手ですし、設定する側からしてもkrewSheetやkrewDashboardは直感的で使いやすい。細かいところもWebのマニュアルを見ながら現場主導で進められると好評です。新しいツールを導入する際に勉強会を実施してもうまく使いこなせないケースもあったが、krewシリーズは特に説明会を開かずともスイスイ使いこなすことができています」と今井氏。

多くの現場で使われているExcelと似た形で使えるだけでなく、krewDashboardのおかげで出力結果も大きく変えることなく活用できていると現場からも評価の声が寄せられているという。

実際の現場では、グレープシティのサポートを受けずとも使いこなせているが、学ぶためのチュートリアルや各種ドリルなど豊富なコンテンツのおかげで、何かあればメンバーに教材として案内しやすいという。

「ツールそのものもこまめにアップデートいただけており、ドリルをはじめ初心者に学べる教材がすぐに提示できるのも、展開する我々からするととてもありがたい」と評価する。

■ ノウハウが共有できるFAQアプリの充実や事業部門横断的な情報共有の基盤として展開したい

kintoneが各事業部門でも多く展開されていることで、現在でも継続的に問い合わせが寄せられているが、内容的に似通ったものもあるので、設定方法なども含めてFAQとして公開していきたいという。

「ツールのマニュアルだけではカバーしきれない様々なノウハウをまとめて公開することで、さらなる活用につなげていきたい」と今井氏は意欲的だ。

また建設技術部ではkintone内に蓄積された情報をうまくkrewDashboardにて分析、可視化することに成功しているが、人事部門などでもデータが蓄積した暁には、krewDashboardを生かしながらデータを蓄積することで得られる新たな付加価値があることをしっかり訴求していきたいという。「きちんとデータが蓄積できればこんなメリットがあるとしっかり伝えることで、データ活用の魅力をアピールしていきたい」と今井氏。

事業部門単体でも大規模な組織体制となっている同社だけに、情報共有も事業部門内に閉じてしまっているケースも少なくない。その意味では、現状はメールやExcelで行っている事業部門を横断した情報共有についても、うまくkintoneやkrewシリーズを活用していきたいという。

「情報共有のための仕組みを簡易的に作るにはkintoneは非常に優れたソリューションです。いろいろな事業部門を支援しながら社内事例をたくさん作り、DX戦略として掲げている業務効率化に向けて、さらにkintoneやkrewシリーズを活用していきたい」と今後について語っていただいた。