導入事例

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星野リゾート様

業種:
宿泊業・飲食サービス業

利用用途:
給与処理

使用製品:
krewSheet

星野リゾート メインビジュアル

事例公開日:2019年11月1日

※ 事例記事の内容や所属は取材当時のものです。

国内外約40施設で働く従業員の給与処理の完全自動化を目指し、
総務担当者が使いやすい入力画面でkintoneによるシステム化を前進

星野リゾートといえば、国内だけでなく海外にまで一度は訪れてみたいと名が知られる日本のリゾートブランド。自然と調和した施設と細部まで行き届いたおもてなしにより、「星のや」「界」「リゾナーレ」といった極上の癒しのひとときを味わえる空間を多数展開している。充実したサービスの提供により星野リゾートの事業は順調に拡大を続け全国各地で活躍するスタッフの数も増えている。そんな中、従業員の労務管理を担うグループ総務ユニットでは、全従業員の給与処理の完全自動化を目指し、その一部を「kintone」+「krewSheet」を活用し一歩前進させることに成功した。グループ総務ユニットの鎗田 梨恵氏とシステム構築を支援した株式会社ソニックガーデンの赤座 久樹氏にお話を伺った。

【課題】施設が増えればスタッフも増える。各地で働く従業員の給与処理を改善したい

人事管理システムとExcelで仲介していた給与処理

星野リゾートではすべての施設が同じオペレーションで運営されており、総支配人・ディレクター職の立候補制度、スタッフ自ら異動先を希望できる制度など、人材流動を活発に進めている。また、新しい施設の開業も相次ぎ、多くのスタッフの異動が日常的に発生している。そのためグループ総務では、従業員の所属する施設の総支配人・総務担当者と連携し、情報を集約して給与処理を行っているが、施設で管理する手当や精算情報をExcelを使ってやり取りしており、ここに大きな課題があった。

当月の従業員のリストを施設ごとにExcelのフォーマットで出力し、各施設に配布。各施設の総務担当者は施設で管理する金額を該当の項目に入力する。末日までに発生した情報を翌日に回収し、ここにグループ全体で管理している住宅手当や確定拠出年金の拠出金などの情報を追記。さらに、このデータを人事システムに投入し、法人ごとのデータに作り変えて出力、給与ソフトに入れる。

多くのスタッフの手を介してExcelデータを作るため、その過程でフォーマットが崩れたりExcelファイルが壊れたりもする。また、各施設ではそれぞれの情報を別のExcelなどで管理しているので入力が二重作業となっていた。費用発生の翌日までにすべての情報を提出しなければならない施設の担当者にとっても、さらにそれを加工して給与ソフトに入れるまでを担うグループ総務にとっても、非常にタイトなスケジュールであることも負担が大きい要因であった。

グループ総務ユニット 鎗田 梨恵様
鎗田 梨恵様
グループ総務ユニット

月の半ばでも多くのスタッフが異動するため、異動前後の施設の担当者間で給与情報を共有し合いながら集約させる。

「新しい施設の開業も相次ぎ、従業員数も増加する中で、この煩雑な業務フローを何とかkintoneに集約し、関係する担当者全員が最終データを同時に作り上げようというアプローチで解決を試みました」と鎗田氏は以前の業務の流れを振り返る。

総務部門のスタッフがシステム構築を主導

星野リゾートは2013年にkintoneを導入済みだ。施設の魅力作りやサービスの改善を現場自ら行うことを推進している星野リゾートではITシステム構築についても「業務をよく知るスタッフがITを作るほうがよい」と考えている。kintoneの柔軟性とシンプルさ、すぐにアプリが作れる点、コミュニケーション機能がそれを実現できるものとして最もフィットしているそうだ。その一方で、kintoneにはAPI連携機能やJavaScriptによるカスタマイズなど高度なシステム構築のための機能も充実している。星野リゾートでは、基幹システムと連携するサブシステムの開発にも現場の業務改善にも素早く対応できるkintoneを業務改善基盤として採用することでビジネスの変化に迅速に対応できるIT環境を整えているのだ。

鎗田氏は星野リゾートの中でkintoneアプリを最も多く作っている第一人者だという。今回の給与処理システムについても鎗田氏が主導。従来のExcelファイルでの配布、手作業による集約、加工を廃止、各自が管理する情報だけを正しくインプットさせることに集中したという。具体的には、これまでの入力用Excelをそのままkintoneに置き換えたアプリを作成。人事システムからスタッフがその月に所属した施設のレコードを自動生成する。各施設の担当者は自施設で発生した情報のみを入力。グループ総務が管理する住宅手当、確定拠出年金拠出金の管理もそれぞれkintone化し、同アプリにボタンひとつでレコードを追加できるようにした。給与ソフトに取り込むデータはスタッフごとにレコードをサマリして出力するというもの。同社では「支給・控除アプリ」と呼んでいる。

とはいえ、鎗田氏はシステム開発の専門家ではないため、kintoneのカスタマイズ実績の高いソニックガーデンの赤座氏に構築支援を依頼した。業務要件のとりまとめとデータを入力するためのkintoneアプリ作成は鎗田氏が行い、アプリ連携やカスタマイズは赤座氏が行うという協業だ。星野リゾートの情報システム部門は、既存システムとの連携やデータの信頼性担保のアドバイスのみに介在したそうだ。まさに「業務をよく知るスタッフがITを作るほうがよい」との方針を実践しつつ、エンタープライズレベルのしっかりした本格的なシステムを構築した事例だといえる。

給与処理の業務フローをkintoneでシステム化した概念図
給与処理の業務フローをkintoneでシステム化した概念図

【導入】krewSheetを入力インタフェースとしてシステム連携の中で使う

現場の入力がなければ、給与処理は成り立たない

各施設の総務担当者がExcelに入力する業務をkintoneアプリに置き換えるにあたり、入力ユーザーインタフェースとしてkrewSheetが採用された。krewSheetはkintoneのデータ入力や編集をExcelと同じ操作で実現できるkintoneプラグインである。実は、鎗田氏は以前kintoneアプリを各施設の現場に提供したときに、操作性の違いに現場が戸惑いkintoneの利用促進がなかなか進まなかったという経験をしている。Excelに慣れている現場スタッフの抵抗感をなくすことの重要性に気づいた鎗田氏はあるセミナーで当時リリースされたばかりのkrewSheetを知り、すぐに導入を決定した。

「krewSheetは設定画面も細かい部分までExcelと同じで、関数も使えました。現場のスタッフは関数を使った集計にも慣れていたのでExcelに慣れ親しんでいるバックオフィス業務のkintone化の抵抗感を下げるにはうまくフィットすると思いました。」と鎗田氏はkrewSheet導入当時の印象を語る。

krewSheet導入後、現場の入力が必要なアプリにはkrewSheet を適用しているとのこと。現場に画面操作の説明をする必要もなく速やかにkintoneにデータを入力できているという。「支給・控除アプリ」の入力インタフェースにも、krewSheetが採用され構築が進んでいった。

krewSheetのAPI

「支給・控除アプリ」は複数のアプリを連携して給与データを成型する。施設の総務担当者や総務ユニットでkrewSheetにデータが入力されたタイミングで、kintoneの別アプリにもデータが書き込まれる。この処理はkrewSheetが提供する専用Web APIにより実現している。

ソニックガーデンの赤座氏はkrewSheetのWeb APIについて「プログラマのことをよく考えて作られているんですよ。krewSheet上でユーザーが複数行のデータを編集して保存ボタンをクリックしたときに、編集した行の情報だけがイベントハンドラーに乗るんです。3行編集されたのなら3行分だけ処理したいというプログラマの気持ちがわかっている。これは素晴らしい」。と高く評価する。しかし、当初は戸惑いもあったそうだ。

リモートワークで取材に応じていただいた ソニックガーデン 赤座 久樹様
赤座 久樹様
株式会社ソニックガーデン
※ リモートワークで取材に対応いただきました

「プラグインやkintoneの連携サービスはアプリを使う人にとってはとても便利なのですが、カスタマイズしたくなったときに予期しない動作が起きるなど想定外のことがあるので、本格的なシステムを組むならExcelのような一括入力ができるユーザーインタフェースも含めて、全て自分でプログラミングしたほうがいいと思っていました」と当時の印象を振り返った。今では、ユーザーインタフェースの部分はkrewSheetに任せ、プログラマはバックエンドの処理に専念できるので、開発期間が短くなる利点を感じているという。

【導入効果】毎月2名で8時間かかっていた集計作業が数回のボタンクリックで完了

支給・控除アプリは2019年10月現在、本番稼働している。支払い・控除データの締め処理や履歴管理、ステータス管理なども組み込まれたエンタープライズレベルのシステムだ。Excel時代は毎月2名で8時間かかっていた集計作業が、いまでは何回かkintoneアプリ上のボタンをクリックするだけで給与ソフトにそのまま取り込めるデータを作成できる。krewSheetにより現場の入力負担が増えることもないという。

今後は各施設で管理しているその他の業務もkintone + krewSheetでアプリ化し支給・控除アプリと連携させることで、給与処理のために毎月発生する現場の入力作業自体を廃止したいとのこと。kintoneを使うのが世界で一番うまい企業になるよう、今後もさまざまな業務にkintoneとkrewSheetの活用を深めていく構えだ。

この事例の導入支援パートナー

株式会社ソニックガーデン ロゴ

株式会社ソニックガーデン

「納品のない受託開発」をコンセプトに掲げ、顧客の事業サービスや社内システムをオーダーメイドで開発、月額定額で提供している。
経験豊富で技術力の高いプログラマを有し、顧客の成長を技術で支えるパートナーとして尽力している。