導入事例

富士フイルムビジネスイノベーション株式会社様のロゴ

富士フイルムビジネスイノベーション
株式会社様

業種:製造業

部署:全社

利用用途:情報共有基盤・業務改善基盤

使用製品:krewSheet / krewData / krewDashboard

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事例公開日:2023年12月20日
※ 事例記事の内容や所属は取材当時のものです。

kintoneをエンジニアリング領域にまで押し上げるプラグインとして評価
調達DXからモノ作りDXへと拡張を広げるために欠かせないkrewシリーズ

複合機・プリンターの開発・販売を中心としたオフィスソリューション事業を軸に、顧客のビジネスイノベーションパートナーとしてさまざまなソリューションを展開している富士フイルムビジネスイノベーション株式会社では、DX人材の育成や業務改善のツールとしてkintoneを活用、金型部品進捗における取引先との情報基盤としてゲストスペースを有効活用するためのプラグインとしてkrewシリーズを採用している。その経緯について、モノ作り本部生産企画管理部 村野 浩氏および調達本部中央調達部 萩原 正明氏にお話を伺った。

【課題】kintone拡販に向けて社内での有効な活用事例が望まれる

2021年に富士ゼロックスから社名を変更し、ビジネスDXの支援を事業の主軸に据え、顧客のビジネスイノベーションパートナーを目指している富士フイルムビジネスイノベーション株式会社。ビジネスソリューション事業や複合機・プリンターを中心としたオフィスソリューション事業はもちろん、コンテンツ製作から加工・配送までを包含するグラフィックコミュニケーション事業まで、創業以来培ってきたデジタル技術やビジネスプロセス変革に関する知見を生かし、さまざまなソリューションを展開している。

同社では、社内のDXにも精力的に取り組んでおり、人材づくりにも注力している。人材育成の一翼を担っているのが、モノ作り本部 生産企画管理部だ。実は同社ではDXというキーワードが普及する以前から、ローコード・ノーコードツールやPythonを活用した業務改善を推進できる人材育成に取り組んでいたのだという。

「モノ作りの中で業務プロセスとITの両方がわかる人材が必要だということでSWI研究会(Smart Work Innovation)という独自の人材育成プログラムを作成したうえで私が講師として教育を行うなど、以前から社内のDX人材育成に取り組んできました」と村野氏は説明する。

モノ作り本部生産企画管理部 村野 浩様
村野 浩様
モノ作り本部生産企画管理部

この人材育成プログラムは、同社のグループ企業が扱っている商材を社内の業務改善に活用することで社内に知見を蓄積し、顧客に良質なソリューションの提案を行えるようにするという意図もあったという。そんな商材の1つとして販売会社である富士フイルムビジネスイノベーションジャパンが取り扱っていたのが、サイボウズが提供するビジネスプラットフォームのkintoneだった。

kintoneについては、営業部門から顧客のDX支援のための基盤として拡販するために、社内活用事例を作成して欲しいという要望が村野氏に寄せられていたこともあり、社内の業務改善にkintoneを活用し、そのノウハウを獲得するというプロジェクトが立ち上がった。

社内での知見を蓄えるべく、業務改善を望む現場にテーマを募集したところ、手が上がったのが萩原氏の所属する調達本部に関する課題だった。

「調達本部内では、以前から複合機を製造するための金型製作における課題の解決に向けてタスクチームを組んで検討を進めてきました。課題の把握はできてきたのですが、課題を解決するためのITツールをどうしたらよいかがわからない状況でした。そんなおり、村野の人材育成研修を受けたところ、kintoneが解決につながると直感したのです」と萩原氏は当時を振り返る。

調達本部中央調達部 萩原 正明様
萩原 正明様
調達本部中央調達部

同社の複合機は、日本で設計した図面をもとに、海外の成形メーカーが金型を製作して部品を作り海外生産拠点の工場で組み上げている。複合機1台を作り上げるためには1000点以上のプラスチック、プレス部品の金型製作が必要で、数十社の海外の取引先に依頼を行い納期に合わせて全ての部品を柔軟に調達しなければならないという。

「調達部門としては、金型部品の製造に関する進捗状況を把握することは欠かせません。進捗情報の管理は基本的にはExcelシートをメールやファイル共有でバケツリレーしながら伝達していたのです。そうすると、我々本部には数週間前の古い情報が届くことになり、タイムリーな情報把握が難しかったのです」と萩原氏。

Excelのバケツリレーのなかでコピー&ペーストが繰り返されることで、本来表記すべき情報がうまく伝達できず、現地に直接確認したり、Excelマクロが組み込まれているケースでは集計がより複雑になったりするなど情報管理は困難を極めていたという。

本来技術的な作業にフォーカスしたいエンジニアが、Excelに忙殺されている状況をなんとか改善したいと考えていたのです」と萩原氏。

さらに、金型の製作はトライアンドエラーを繰り返すため、スケジュール変更が多く、納期後半に総点検すると遅延が発覚することもあるという。そのための分析手法や、どれを遅延部品として管理するかの判断基準が属人化していて、一部のエンジニアがExcelを目視して確認していた。しかも、複数の機種で同様の事象が発生することもあり調達部門としては頭の痛い状況だった。

ビジネスフローの課題

【選定】ゲストスペースでの情報共有や暗黙知を形式知に変えるkrewシリーズ

Excelのバケツリレーと遅延の未然防止。萩原氏と村野氏はこの2つの課題をkintoneで解決するために、まずは調達の進捗管理に必要な管理項目の標準化を進めながら、kintoneを整備したうえで、海外の取引先との情報共有方法を検討。取引先は自分達のデータだけを見たり、入力したりできるようにして、調達本部は全取引先のデータを一覧できる環境を構築する必要があったという。そこで村野氏が提案したのが、krewDataで取引先に必要な情報を切り出し、ゲストスペースに展開する方法だった。さらに、取引先の入力のしやすさのためにはExcelのような操作ができるkrewSheetを提案した。

「kintoneアプリをカスタマイズして情報を仕分けることも考えましたが、その場合はプログラミングスキルのあるシステム部門に介在してもらう必要がありました。業務アプリは、現場で管理・運用できるほうが良いと思っていたところ、kintoneの案件を扱っている富士フイルムビジネスイノベーションジャパンのSEがkrewDataを強くお勧めしていたので使ってみようと思いました」と村野氏。

結果として、調達本部ではExcelに慣れている取引先に負担なく入力してもらうためにkrewSheetを採用し、取引先に必要な情報を切り分ける部分にkrewDataを活用。さらに、部品製作の難易度や重要度に合わせて遅延の状況を的確に判断してきたエンジニアの暗黙知を形式知として可視化するべくkrewDataでアルゴリズムを組み込み、それをダッシュボートで可視化する環境としてkrewDashboardも採用することになったのだ。

【効果】サプライチェーン全体のDX化を実現するための環境整備に大きく貢献

■ 調達部門の活動が社内表彰、社内に広がるkintoneプラスkrewシリーズ

現在は、ゲストユーザー含めて500名ほどがkintoneおよびkrewシリーズを活用しており、さらに数百のアカウントが追加される計画となっているとのこと。調達部門での取引先との金型部品製造における進捗管理以外にも、正式採用以前のテストケースも含めてさまざまな部門に広がっている。アプリはテスト的に作成されたものも含めて800を超えており、取引先ごとに作られているゲストスペースは30ほどに到達している。

「ゲストスペースにおいては、複合機の機種ごとにそれぞれの金型部品の進捗を管理しているアプリが展開されていて、全て合わせると数千を超える部品の進捗管理に活用しています。その全てにkrewシリーズが活用されており、欠かせないプラグインとなっています」と村野氏は説明する。

前述した調達本部での金型部品の進捗管理では、村野氏を始めとする生産企画推進部と萩原氏および調達・モノ作り部門のメンバーによる推進チームが編成され、わずか3ヶ月ほどでkintoneをベースにした進捗状況の可視化とkrewDataを使った双方向でのデータのやり取り、そしてkrewSheetを使ったゲストスペースでの取引先との情報共有を実現したという。その後、継続的に改善を続けながら、現在は中国/ベトナムの主要な取引先で活用を開始している。krewDashboardでの可視化は、社内での見える化を順次進めている段階にある。

kintone とkrewシリーズの具体的な使い方としては、まず、ゲストスペースに展開されたkrewSheetに取引先が部品製作の進捗状況を入力し、その情報をkrewDataで取得し、調達本部で管理しているkrewSheetに展開。krewSheet上で全ての部品製作の進捗状況を管理し、遅延の発生状況に応じて色分けして視認性を高めており、それらを誰にでも分かるようにkrewDashboardで可視化している。

金型部品の進捗を全体俯瞰したkrewDashboardの実際の画面
▲ 金型部品の進捗を全体俯瞰したkrewDashboardの実際の画面

データの反映はkrewDataのスケジュール実行により夜間バッチで処理され、日々の進捗状況がデイリーで把握できるようになっている。調達部門にて反映した情報はゲストスペース上のkrewSheetに展開し、取引先ごとに必要な情報が出し分けされるなど、適切な情報管理が実施されている。

krewSheetを適用した優先順位を色分けしたフォローシート
▲ krewSheetを適用した優先順位を色分けしたフォローシート

「進捗を計画と実績で色分けして時系列で把握するような見方はもちろん、数百ある部品の中で予定通りの進捗と遅延のタスクがどの程度あるかも分かりやすく表示させており、赤で表現された遅延の部分だけをしっかり確認していけばいいようになっています。遅延の優先順位など技術者の暗黙知だった情報もうまくkrewDataでアルゴリズム化できました」と萩原氏は評価する。

遅延対応の優先順位を絞り込むkrewDataのデータ編集フロー図
▲ 遅延対応の優先順位を絞り込むkrewDataのデータ編集フロー図
krewDashboardで金型の難易度と遅延日数を色分けしたシグナルで表示
▲ krewDashboardで金型の難易度と遅延日数を色分けしたシグナルで表示

調達部門とモノ作り部門で進めてきたこの取り組みは社内の事例報告会で賞を受賞したとのこと。これにより、他本部のメンバーや関連会社などがkintoneの存在に気づいて村野氏のSWI研究会の取り組みに手を挙げたとのこと。kintoneおよびkrewシリーズが同社に広がり始めている状況だ。

具体的には、関連会社が行っている見積りの管理、金型に関する図面情報や検査データなどの各種ドキュメントの情報共有基盤としてkintoneを活用している。

「取引先との情報共有やコミュニケーションのインフラとしてkintoneとkrewシリーズが活用されている状況です。kintoneを使って業務改善をしたいと相談がある場合は、krewシリーズがある前提でデモも見てもらっています。社内の勉強会でもプラグインに関する講座も開催しているので社内メンバーにもプラグインの存在は広まっています」と村野氏は説明する。

krew導入後のビジネスフローの変化、効果
■ 7〜14日かかっていた進捗確認が1日で可能に、工数削減やビジネス機会の創出にも貢献

kintone+krewシリーズを活用した効果については、従来、金型部品の進捗状況を把握するまでに7〜14日ほど要していたものが、今では1日で把握できるようになるなど、劇的な改善効果を生んでいるとのこと。

「Excel作業に忙殺されていたエンジニアの工数も88%ほど軽減でき、本来やるべき業務に時間を割くことができるようになっています」と萩原氏は高く評価する。

「IT部門にシステムの構築を依頼すると、業務要件の定義だけでもかなりの時間を要していたものが、今はS W I研究会でI T教育を受けた現場のメンバーが、数ヶ月で業務改善を成し遂げられるようになりました」と村野氏もプロジェクトの手応えを感じている。

まさに社内で業務改善を進めていくためのDX人材育成に向けた村野氏の取り組みが現実の成果として現れている好例となっているわけだ。

取引先にはkintoneに情報を入力してもらうことで、業務管理が楽になるという点を提示しながら、協力を求めているという。海外でのネット環境の違いや多岐にわたる項目の精査など改善テーマもあるが、サプライチェーン全体のDXに貢献するという意識もあり引き続き改善を続けているとのこと。

「日本だけでなく、海外の取引先を含めたサプライチェーン全体にDXの波が浸透しつつあると考えており、我々としてはExcelからkintoneを使ったやり方に変えていくという意思表示を取引先に行っています。ゲストスペースとkrewSheetを活用することでExcelのやり方を保ちながら取引先側のメリットも提示するようにして、双方の業務改善を進めていけたら良いなと考えています。」と萩原氏。

社内での業務改善事例は、顧客や富士フイルムビジネスイノベーションジャパンの営業部門に紹介しながら3社でディスカッションを深める“モノ作りコラボ”と呼ばれる活動を通じて、新たなビジネスにつなげていくきっかけ作りにも生かされている。ビジネス面でも社内の成功事例が商売に貢献していると言える。

■ エンジニアリング領域までkintoneを高めるプラグインとしてkrewシリーズを評価

krewシリーズについては、エンジニアリング領域にまでkintoneを高めるツールとして高く評価しているという。

「krewシリーズとkintoneを併用することで複雑なものが要求されるエンジニアリング領域でもkintoneを活用できると考えています。krewシリーズがなければkintoneでの実現は難しかったかもしれません」と村野氏は高く評価する。

特にExcelに慣れた現場に対して移行をスムーズに実施するためにも、krewSheetは重要なプラグインの1つだという。また、ゲストスペースとの同期以外の活用にも、krewDataが大いに役立っていると評価が高い。

「krewSheetだけを使っていた当初は、Pythonを駆使して外部でレポートを作成していましたが、krewDataでデータを加工・集計してkrewDashboardで表示するようにしたら、どんなものでも見える化できる可能性を感じています」と評価する。

また、メシウス(旧グレープシティ)の対応についても評価の声が寄せられている。

「以前はできなかったkrewSheetでの列のグループ化や表示非表示などへの対応も、バージョンアップで対応いただけるなど、機能強化に向けても適宜進めていただけています」と萩原氏。

■ 紙業務の電子化に取り組みながら、取引先との情報プラットフォームとして拡張したい

紙で取引先とやり取りする機会がまだ残っている調達本部では今回kintoneを軸に電子化する環境の実証ができたことで、今後は紙の業務をさらに電子化していきながらDX化への歩みを着実に進めていきたいという。

「ゲストスペース上で取引先の業務効率化につながるような提案を進めるなど、我々としての調達DXをさらに加速させていきたい」と萩原氏は意欲的だ。

また、現在は取引先の金型部品進捗管理で活用を開始しているが、そのほかの調達業務においても基幹システムとの棲み分けも考えながら、まだ打てる手が数多くあると今後の展開に期待を寄せている。

またクラウド環境で利用できるkintoneだけに、取引先との情報共有に有効性が高いため、見積りなど帳票のやり取りや各種申請業務など、金型部品の進捗管理以外にも改善できる業務が数多く残されているという。調達だけでなく、生産技術や設計部門、そして海外拠点などへのkintoneおよびkrewシリーズの展開を加速させていきたい考えだ。

社外とのやり取りだけでなく、社内にもまだExcelやメールを駆使している業務が数多くあります。Excelの操作性そのままにクラウド化できるkrew Sheetをはじめ、Excelでの集計や加工はロジックを組めるkrewData、そしてメールでレポートを送らずとも簡単に情報が可視化できるkrewDashboardをさらに活用しながら、プロセス改革における重要なインフラとしてモノ作りDXへ生かしていきたい」と村野氏に今後について語っていただいた。